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3/30 マタイ福音書のイエス (第33回)~〈姦通罪〉を検討する〜

  • 執筆者の写真: 平岡ジョイフルチャペル
    平岡ジョイフルチャペル
  • 5 日前
  • 読了時間: 7分

2025年3月30日 主日礼拝

聖書講話     「マタイ福音書のイエス (第33回)

       ~〈姦通罪〉を検討する〜

聖書箇所    マタイ福音書 5章27〜30節   話者 三上  章


      [聖書協会共同訳]  

        ※下線は修正の余地があると思われる部分

27 「あなたがたも聞いているとおり、『姦淫するな』と命じられている。 28 しかし、私は言っておく情欲を抱いて女を見る者は誰でも、すでに心の中で姦淫を犯したのである。29 右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨てなさい。体の一部がなくなっても、全身がゲヘナに投げ込まれないほうがましである。 30 右の手があなたをつまずかせるなら、切り取って捨てなさい。体の一部がなくなっても、全身がゲヘナに落ちないほうがましである。」



 以下は,ギリシャ語原文の解明に基づく三上の私訳と講解です.

27 Ἠκούσατε ὅτι ἐρρέθη · Οὐ μοιχεύσεις.

あなたがたは聞きました/と/言われたことを←あなたは姦淫してはいけない.


27.1 「あなたがたは聞きました」

 イエスの在世中の時代において,およびイエスの死後にマタイ福音書が作成された時代において,重要な事柄は,読むのではなく聞くものであった.ひとつつには,ほとんどの民衆は文字を読むことができなかった.もうひとつは,神の言葉と信じられていた文書は,長老たちによって読誦されるほうが,霊験あらたかであると受け止められていた.たとえば,イスラームのクルアーン.アラビア語で読誦されるものだけが,クルアーンである.翻訳はクルアーンではない.

27.2 「と/言われたことを」

 ユダヤ教社会において,長老たちによって読誦された,モーセに由来すると信じられた父祖伝来の口承律法を指す.

27.3 「あなたは姦淫してはいけない」

27.3.1 姦淫する(モイケウオー)

 「姦通する」とも言う.一般的には,配偶者以外の者との性交渉をいう.厳格な性の抑制を特徴とする社会,例えばイスラム社会では,婚姻外の性交渉のすべてをこれに含めて禁止,制裁を科している.姦夫は石打ちの死刑,夫による姦婦の殺害も合法である.古くはハンムラビ法典(前18世紀頃に成立)も死刑をもってのぞみ,キリスト教,ユダヤ教も姦通を禁じている.

27.3.2 日本における姦通罪

 以下は,歴史学者の田中利幸氏による解説からの引用である.「日本の旧憲法下では,姦通は,妻が行った場合は,夫の告訴によってその妻と相手の男とが処罰されたが,夫が行った場合は,その相手が人妻でない限り処罰されなかった(刑法183条。刑は2年以下の懲役).しかし戦後,現行憲法に男女の平等(14条),夫婦の平等(24条)がうたわれたのに伴い,夫婦とも平等に処罰するか,あるいは両方とも不処罰とするかの必要が生じた.処罰・不処罰それぞれから生ずる種々の効果,刑法と道徳の役割等をめぐって,激しい議論が交わされたが,結局不処罰論が国会で多数を占め,1947年に姦通罪の規定は削除された.」

 現在の刑法において,不倫や不貞について定めた条文は存在しない.いわゆる浮気は犯罪行為には該当せず,罰金や懲役といったような罰も与えられない.

⑥ 27.3.3 旧約聖書における姦通罪

 レビ記 20章10〜12節(聖書協会共同訳)

「10 人が他の人の妻と姦淫するなら,すなわち隣人の妻と姦淫するなら,姦淫した男も女も必ず死ななければならない.

 11 人が父の妻と通じたなら,父を辱めたために,両者とも必ず死ななければならない.血の責任は彼らにある.

 12 人が息子の妻と通じたなら,両者とも必ず死ななければならない.彼らは道を外れたことをしたからである.血の責任は彼らにある.」

 イエスの時代に,この律法がどれくらい厳密に適用されたかは不明である.

27.3.4 ハンムラビ法典(前17世紀頃)の家族法における姦通罪

第129条 妻の不貞 現行犯で妻の不貞が見つかった時,男と共に水中に没せられるが,亭主が助命すれば許される.

第130条 乙女の強姦 婚約はしたが,未だ父の家にいる乙女を強姦したる男は死刑、娘を無罪放免.

第131条 密通の嫌疑 妻が夫から密通の疑いをかけられても現行犯でないなら,神に宣誓して実家に帰れる.

第132条 密通の反証 他人の後ろ指で密通の疑いをかけられた妻は,河神の神明裁判によって反証できた.

27.3.5 河神の神明裁判

 司祭が口上を読み上げ,手足を縛った被告を水に沈める.沈んだままなら無罪,浮かべば有罪である.

⑩ 27.3.6 「不倫罪」の女性を石打ちで殺害 アフガニスタン

 現代世界においても,このような蛮行がまかり通っている国々がある.不倫は甘く見過ごされるべきではないが,石打の刑は即刻廃止されるべきである.

27.3.7 不倫に関する緩やかな見解

 社会学者の上野千鶴子氏の意見:「人はなぜ不倫をしないのか.私には信じられない」「むしろ,不倫しない人はなぜしないのか.結婚して性的な身体の自由を手放すなんて恐ろしい」.出典:亀山早苗『人はなぜ不倫をするのか』(SB新書)


27.3.8 放縦な社会への警鐘〜ウィリアム・バークレー博士

 William Barclay, Ethics in a Permissive Society.


28 ἐγὼ δὲ λέγω ὑμῖν ὅτι πᾶς ὁ βλέπων γυναῖκα πρὸς τὸ ἐπιθυμῆσαι αὐτὴν ἤδη ἐμοίχευσεν αὐτὴν ἐν τῇ καρδίᾳ αὐτοῦ.

しかし私は言います←あなたがたに/と/←誰であれ見ているその男性は←ある女性を/ために/←貪りたい←彼女を⇦すでに姦淫した←彼女を←自分の心の中で.


28.1 「しかし私は言います←あなたがたに/と/←」

 福音書記者マタイは,イエスに付託して自分の見解を語る.彼の見解の特徴は,精神主義.身体を軽んじる傾向がある.

28.2 「誰であれ見ているその男性は←ある女性を/ために/←貪りたい←彼女を」

28.2.1 誰であれ見ているその男性は←ある女性を」

 「誰であれ」というのは,金銭所有の多寡,社会的地位の上下,年齢の大小にかかわらず,ということ.「見ている」(ブレポー)は現在時称なので,このように訳した.

たまたま視野に入ったというよりは,「物色している」「いやらしい目で見ている」ということであろう.「ある女性」と訳した「ギューネー」は,「人妻」という意味ももつ.

28.2..2 「ために/←貪りたいために←彼女を」

 「貪りたい」と訳した「エピテュメオー」は,「激しく欲しがる」が原義.相手が人妻であろうとなかろうと,貪りたいという魂胆で女性を見ることを,マタイは非難している.節度のある男性は,人を,女性か否かではなく,人間として見る.


28.3 「すでに姦淫した←彼女を←自分の心の中で」

 心の中での姦淫.マタイの精神主義が露呈している.


29 εἰ δὲ ὁ ὀφθαλμός σου ὁ δεξιὸς σκανδαλίζει σε, ἔξελε αὐτὸν καὶ βάλε ἀπὸ σοῦ, συμφέρει γάρ σοι ἵνα ἀπόληται ἓν τῶν μελῶν σου καὶ μὴ ὅλον τὸ σῶμά σου βληθῇ εἰς γέενναν.

もしあなたの目が←右の⇦あなたに犯罪をおかさせるならば/えぐり取りなさい←それを.なぜならあなたに有益であるからです/ために/滅びる←あなたの肢体の一つが,そしてあなたの身体全体が投げ込まれない←ゲエンナの中に.

29.1 「もしあなたの目が←右の⇦あなたに犯罪をおかさせるならば/えぐり取りなさい←それを」

291.1  「もしあなたの目が←右の」

 なぜ「右の」なのか?左も目も貪ることができる.おそらくマタイは,右目を利き目と考えている.より貴重な目ということ.ここでは肉体の目のことではなく,心の目,悪い心の目,下心の意味であろう.

29.1.2 「犯罪をおかさせる」(スカンダリゾー)

 「スカンダリゾー」は,「〜にスカンダロンを与える」が原義.「スカンダロン」は,敵に対する「罠」が原義.落とし穴,障害物など.転じて,侮辱,攻撃,犯罪.ここでは「犯罪」の意味に解した.「あなたに犯罪をおかさせる」という意味になる.

29.1.3 「えぐり取りなさい」

 下心を除去しなさい,追い払いなさいということであろう.これを邪心を払うという.昔の人は,邪心は悪鬼を呼び込むと考えた.それゆえ邪気払いをした.

 

29.2 「なぜならあなたに有益だからです」

29.2.1 「有益である」

 マタイの狭い宗教的枠組みの観点から見た有益性のこと.社会全般への有益性は,眼中に入らない.たとえば,米価格の低下,米農家の保全,米を食い尽くす外来者対策.農林水産省さん,有益な対策をお願いします!


29.3 「/ために/滅びる←あなたの肢体の一つが,そしてあなたの身体全体が投げ込まれない←ゲエンナの中に」

29.3.1 「/ために/」

 「ために」というが,ほんとうに「為」になるのか?

29.3.2 「滅びる←あなたの肢体の一つが,そしてあなたの身体全体が投げ込まれない←ゲエンナの中に」

 マタイは「ゲエンナ」という語を7回も使用している.他の福音書の二倍以上である.脅迫的精神構造を露呈している.おそらく「永遠の刑罰」のようなことを考えている.ということは,死んでも死なない「永遠の生命」のようなものと対比しているのか?「天国」ではなく「地獄」だぞと言われると,一般民衆は恐れおののく.


30 καὶ εἰ ἡ δεξιά σου χεὶρ σκανδαλίζει σε, ἔκκοψον αὐτὴν καὶ βάλε ἀπὸ σοῦ, συμφέρει γάρ σοι ἵνα ἀπόληται ἓν τῶν μελῶν σου καὶ μὴ ὅλον τὸ σῶμά σου εἰς γέενναν ἀπέλθῃ.

そしてもしあなたの右手があなたに犯罪をおかさせるならば/それを切り取りなさい.そして投げなさい←あなたから.なぜならあなたに有益であるからです/ために/滅びる←あなたの肢体の一つが,してあなたの身体全体が投げ込まれない←ゲエンナの中に.


30.1 「右手」

 本節の趣旨は29節と同じである.「右手」は「手籠め」という名の暴力に使用してはいけない.余計な「手出し」は無用である.手は,「手助け」のためにある.イエスの活動はもっぱら手助けであり,「手当て」であった.




























 
 
 

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